好きになっても、いいですか?

敦志はというと、つい、あの“純一”に――という驚きと可笑しさで、ぽろっと素顔を出してしまったらしい。


「あ……申し訳ありません、つい」
「やっぱり、早乙女さんて秘書以上の関係なんですか?」
「……あんまり知る人間はいないので、口外は」
「秘書の一番の義務ですからご安心を」


麻子の人柄、言葉を疑わない敦志は躊躇うことなく自分達の関係を簡単に話をし始める。


「私達は従兄弟です。私の母が、純一くんの母親の妹で。藤堂コーポレーションと言う名の通り、後継者は藤堂の名を持つ純一くん。
私は言ってみれば、全く関係のない部外者なんです。けれど、純一くんに声を掛けられまして……その時に勤めていた会社を退社して、ここに雇ってもらったんです」
「じゃあ、昔から……」
「ええ。私は至って普通の家庭でしたが、彼は……。それでも唯一、親しくさせて貰ってたのが私です」


言われてみたら、二人はどことなく雰囲気が似ている。

麻子はそんなことを思い返して話を聞いていた。


「ずっと、いるから――――ですよ」
「――え?」




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