好きになっても、いいですか?

「あなたのことを、彼が心底嫌だなんて思ってなんかいないことがわかるのは」


敦志はメガネを外して笑顔を浮かべ、麻子に言った。
本当に癒される、彼の優しい笑顔に、麻子も一瞬頬を赤らめてしまった。


「彼は決してあなたを悪いようにはしませんよ。長年一緒だった私が保証します」
「……そんなのはどうでもいいですよ」
「少し、期待してしまいます」
「え?」


メガネを再び掛け直し、右手の中指でそれを押し上げる。
そしてゆっくりと麻子を横切って、背を向けたまま敦志は言う。


「藤堂純一という人間を、変えてくれるのか、と」


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