好きになっても、いいですか?
「先日、私の秘書、早乙女が失礼いたしました」
「ああ。彼はとても優秀な方のようで」
「いえ……それで、その早乙女からあなたからの伝言を伺いました」
「……それは、ここに立っていることを見ればわかりますよ」
克己は小さく笑うと、純一をじっと観察するように見た。
顔は噂通り整っていて、礼儀作法もしっかりとしている。
ただ、表情があまり豊かではない――。
そのことで、冷血だと感じる人間もいるかもしれない。
そんなことを頭で考え分析していると、純一が口を開いた。
「芹沢さん。あなたのおかげで、麻子さんは秘書課への異動を聞き入れて下さいました」
「いや。あなたも麻子の扱いに手を焼いているのでしょう」
「…………」
「ははは、図星かな」
目を細めて、体を小さく上下させながら笑う克己を見て純一は言った。
「実際、本当に、今までいなかったタイプではあります……が、驚かされることの連続で、いい刺激になっているのかもしれません」