好きになっても、いいですか?

04



「今日は定時で上がっていい。昨日は遅くまで残業させたからな」


17時を過ぎた頃、純一が麻子に向かってそう言った。
その言葉に、麻子も初めは本当にいいのかと敦志の顔を窺ったが、敦志の目も“イエス”と言っていると解釈して、麻子はまだ夕日の沈まないうちにオフィスを出た。


「急いで帰って行きましたね」
「大方、行き先はあそこだろう」
「父親の所、ですか」


純一は椅子に掛けてデスクの前の業務をこなしながら、窓際で外の様子を見る敦志に答えた。

デスクの上には、また新たに紙袋が置いてある。
それは昨日と続いてはしまうが、有機野菜がたくさんで、ローカロリーで有名なサンドイッチの店の袋だった。


「夕方頃、少しだけ外出を願い出たのがこれだとは」


その紙袋を見て、純一がぽつりと漏らした。
麻子が用意した、純一の夜の分の食事だ。


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