白の森
男の欲望なんて結局はソコに行き着く。

好きな女を自分で染めたいとか汚したいとか

ティアをそんな目で見た自分が汚く思えた。

「スタンさんの約束もある。オレは向こうに必ず帰る。オレはお前との別れが辛い、だからこれ以上お前を好きになりたくない」

好きだと遠回しに言っているようなものだ。

「アッシュはやっぱり帰りたいのね」

ティアが声を出した。

「私が帰って良いって言ったら、好きになってくれる?でも駄目。人間たちがまたくるもの。アッシュが街に帰れたらアッシュは喜びね。アッシュがうれしいと私も嬉しい。でもアッシュが帰ったら私はまた一人」

自問自答しているようだった。

ティアは初めての感情に戸惑っているんだ。

ごめんな。

オレなんか好きになって。

なにもしてやれないのに。

ティアがゆっくり体を起こしてアッシュを見た。

目は真っ赤で、頬には涙の後がある。

「ティア?」
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