白の森
鏡を見始めてからどれだけの時がたっただろうか。

時間を知るすべもないここでは、知るよしもないのだが。

本当は部屋にこの鏡を持ち込みたかったが、ティアが出すと言ったから、それは止めた。

多分、約束をやぶったらティアは容赦なく自分を斬るだろう。

あれは秘宝と呼ばれるものだ。

その存在を森の外の人間が知ったら、確実に奪いに来るはずだ。

彼女や彼女の祖母たちはあれを守る役目も担っていたのかもしれない。


部屋に戻ると。扉の前に食事が置かれていた。

温かい。

きっとアッシュが戻ってくるまで火で暖めていてくれたのだろう。

心細やかな気遣いも、わずらわしいと思ってしまう。

「クソっ」

約束は守らなくてはならない。スタンの安否を確信して認めたのだから、食事は取らなくては、捨てることも出来ずアッシュはその食事に口をつけた。

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