テレビの中の、人。
1
さっき、ルミネで出演してた『ビタミンK』
例の、サトシとタイチと、そしてリョウが来た!
「まじで!?」
思わず言ったあたしの言葉に、3人がちらっと、こちらを見た。
ボーイが、テーブルに案内する。
「指名の女の子いますか?」
「あ、初めてなんで。」
「誰でも。」
「ハイ。」
劇場とはまるで違うテンション。ふつーのひと。
店の女の子の中に、何人か、
「あれ?テレビ出てない?あの人たち・・・?」
と、声をひそめる子もいる。
だけど、たいがいは・・・
テーブルに通したボーイも含め、気づかない。
なんせ、全然売れてない芸人。
やっと、やっと、最近・・・
ごくたまにバラエティー番組にちらっと出る程度。
ビタミンKには、3人の女の子がついた。
こんな時に限って~!
あたしは心の中で呟き、アラキを横目で見た。
ミズキと二人で、
(びっくりなんだけど!)
って、目配せした。
アラキに事の成り行きを話す。
「あ~、そう・・・。芸人さんね。」
年配のアラキには、興味もなければ、ピンともきてない。
3人についてる女の子の一人が、気付く・・・。
「あれ?!見たことある!」
それをきっかけに店中が、ざわめき、
ビタミンKが浸透する。
それから、3人組のテーブルは、お笑い系のネタで
盛り上がり、楽しそうだった。
それを横目に、
羨ましい気持ちになってた。
「時間制ですが、延長しますか?」
ボーイが、3人に聞く。もう90分がたっていたのだ。
「ああ、けっこうです。」
リーダーの、リョウが言った。
(帰っちゃうよ)
ミズキに言った。
うちらは・・・、
(行く?!)
もう、決めていた。
「ありがとうございました~」
ボーイが言って・・・、
3人が、店のドアを開けた。
ついてた女の子達が見送る。
エレベーターで、降りた頃・・・、
「行こ!」
あたしとミズキが、走った。
「アラキさん、待ってて!」
そういうと、階段を降り、3人を探した。
社交会館の前の通りを歩いてた3人がいた!
「あの~!」
ミズキが、叫んだ。
3人が、一斉にこちらを見た。