テレビの中の、人。

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店につくと、

マミが意地悪そうに寄ってきた。

「りえさあん、サックンすっかり有名人ですね♪」



ビタミンKが有名になればなるほど、

ここぞとばかりに、その話しで持ちきりになる。


人って、自分勝手なもんだ。



「あんたに関係ないでしょ。」


さっさと立ち去るあたしを、マミは睨んでた。




むしゃくしゃしながら、仕事してた。

時間が早く過ぎて、

さっさと家に帰りたかった。


「りえちゃん、今日機嫌悪いね。」

常連客が言う。

「そぉ?」

あたしは適当に答えた。


その時、

ブーッブーッブーッ、

胸に挟んである、携帯のバイブが鳴った。



!!!ー


「ちょっとごめん!」



あたしは席を外すと、裏の休憩室に行った。


それは、サックンからだった。


もう、どれだけぶりだろう!・・・。





「サックン!!」

「りえちゃん、久しぶり!なかなか電話できなくてごめん。」

「ううん!」





それは、


今度、ロケで富山に来ると言う内容だった。

久しぶりに、会おうね、と。




「分かった!来週土曜に、高岡ね!」

「高岡の・・・、海王丸の港ね!分かった!」



場所と時間を確認して、電話を切った。



「あぁ!嬉しい!」




ガサッ!




「誰?!」





その時、

誰かが立ち去る気配がした。




すぐ、後を追って探してみたけど、

誰もいなかった。




「・・・この香水のニオイ・・・。」



それは、

いつもマミが付けている、香水の香りだった。



(聞かれた?!・・・)



けれども、その時のあたしは、

過る不安よりも、


電話がかかってきたこと、


何より、また会えるという喜びにのほうが大きくて、



浮かれていた。



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