テレビの中の、人。
5
「いいよ、行って来て。」
「ミズキも行こう!」
「行かない。あたしがタイチと会うのは、この子を生んで連れて行く時だよ。」
「まだそんなこと言ってる・・・!」
約束の日の、土曜日。、
もう、夕方になって、
時刻が迫っていた。
「あたしは、今日から店に出るから。」
「そんな体で!・・・大丈夫なの?!」
「大丈夫!決めたらスッキリした!」
何度説得しても、聞かないミズキに、
気になりながらも、
あたしは、車を走らせた。
約束の、
海王丸がある、新湊へ・・・。
サックンに会える嬉しさよりも、
ミズキのことが、気になった。
新湊に着いて、
海王丸がある、海岸べりまで行く。
すでに、
ロケを見に来たファン達で、溢れ返ってた。
遠目で、
サックンを見た。
ううん、・・・
ビタミンKという、売れっ子芸人を、見た。
そんな、感じがした。
改めて、「芸人」を感じた・・・。
ロケが終わり、
3人に、ファンが殺到し出す。
握手とか、サインとか、
一緒に写真を撮る姿も、見えた。
それを見て、
サックンが、サックンじゃないように、見えた。
こんな感情になったのも、
こんなありのままの姿を見たのも、
初めてで、
あたしはどこか、
「覚悟」に似た、気持ちになった。
ー辺りはもう、真っ暗になった。
ようやく、
プルルルルル・・・・・
あたしの携帯が鳴る。
「・・・サックン?」
「りえちゃん!遅くなってごめん!今、どこ?」
「海王丸の近くの、駐車場だよ。」
「今から行くから、待ってて!」
そういうと、
人目を忍んで、サックンがやって来た。
あたしの車の、助手席に、乗り込んだ。