ヒキコモリンコ
ゆっくりと、思い出をたどるくらいのペースでページをめくる。
すると不意に名前を呼ばれた。
「…周作。」
「起きた?気分は?」
俺の問いかけに、じいちゃんは、うん……と曖昧に答える。
首だけこちらに向け、俺の手元を見た。
「その本…。」
「あぁ…昔じいちゃんがくれたやつ。」
じいちゃんはふっと薄く笑う。
「俺が読んでたやつだから、もうボロボロだな。」
「本自体は古くなっても、中身は変わらねぇよ。」
俺がいうと、やんわりと頬を緩ませた。
なんだか幸せそうに見えたのは、俺の気のせいだろうか。