すべては君を救うため
「キャス、カインはまた夜泣きしているのか?」
「あらダン。起こしちゃった?」
「凄まじい泣き声が聞こえたもんでな」
「本当…凄まじすぎるわよ」
「ま、こんだけよく泣きゃー元気に育つだろ」
「どうかしら、まったく…」
必死にカインをあやしていたら、夫のダンまで起こしてしまった。
子育てってこんなに大変なのね…。
「うきゃきゃっ」
ダンがカインを抱き上げると、カインは大喜び。
まったく、その笑顔に何回騙された事か…。
「そういえば」
カインを再びベッドに寝かせて、ダンは静かに口を開いた。
「王女様もカインと同い年だったよな?」
「えぇ。ちょうどカインが産まれる前に王女様がお産まれになったから、私たちはそれどころじゃなかったけどね」
少し前、この王国に念願の王女様が産まれた。
王様も王妃様も大変お喜びになって、王国中が歓喜に沸いた。
王女様はエレンと名づけられ、王国中の愛情を一身に受けてすくすくと育っているらしい。
「カインが王女様と結婚してくれたらなぁ」
「ダンったら…そんなの無理にも程があるわよ」
「そうかぁ?カインも俺に似て結構凛々しい顔立ちだと思うんだが…」
「よく言うわよ…結局ただの親馬鹿じゃない」
「まぁな」
ガハハハハと豪快に笑ったダンは再び寝室へと戻っていった。
私はカインに王女様と結婚してほしいなんて事は望まない。
ただまっすぐ純粋に育って、平和で明るい未来を築いてくれれば、それでいい。
あ…強いて言うなら、この宿屋を継いでくれたら嬉しいかなぁなんて。
「ふにゅ…」
笑顔ですやすやと眠るカインに目配せをして、私も眠りにつく。
明日も早起きして仕事しなきゃいけないしね!
「オギャァァァァァ!!!!」
「ちょ…ちょっとは寝かせろぉぉぉ!!」