すべては君を救うため
翌日、宿屋はいつになく大盛況。
「キャスすまんな、疲れてるのに」
「大丈夫よこれぐらい」
笑顔でダンのすまなそうな顔にそう言ったけど、本当は寝不足で頭がガンガンする。
今日は王国に旅人の一行が訪れて、普段はあまり仕事のない武器屋や防具屋なんかも慌しく働いている。
そんな中でダン1人に頑張らせるわけにはいかないもの。
カインが大人しく寝てくれてる間だけでも手伝わないとね!!
「この王国の人々は皆親切だなぁ」
「本当だよな」
なんていうお客様の声が聞こえて、思わずにやにや。
「そういえば、シュルツトの森にいた蛇…やけに強くなかったか?」
「確かに。1度や2度ナイフで斬った程度じゃ死ななかったし」
…え?
「最近は動物たちが凶暴になったな」
私は2人の言葉を疑った。
シュルツトの森といえば、王国を囲むようにある森。
綺麗な花が咲き乱れて、小鳥のさえずりが所々から聞こえて…まるで平和を象徴するかのような森のはず。
それなのに…どういう事?
「あの…すみません」
「あ、女将さんですか?」
「この宿、ベッドがフカフカで気持ちよく眠れそうですよ」
「それはよかったです!…それで、先程2人の会話が少し聞こえてしまったのですが…シュルツトの森に何かあったのですか?」
「「何か…うーむ……」」
私がシュルツトの森について聞くと、2人は困ったように顔を見合わせてしまった。
「僕たちも旅人なので、この辺りの事は詳しくないのですが…」
「話に聞いていた限りだとシュルツトの森は平和な森だと聞いていたのに、そうでもなかったんです」
「そんなまさか!」
「本当です。動物たちは皆牙を剥き出しにして僕たちに向かってきて…」
「斬ってもまるで効いていないかように平気で起き上がってきて…恐怖を感じました」
「そうですか…話して頂き、ありがとうございます」
「「いえいえ」」