すべては君を救うため
宿屋から広場へは歩いてだいたい5~6分。
初めはぐずっていたカインも、お腹いっぱいになって程よい揺れの中で眠りに落ちたみたい。
王女様もこんな感じなのかしら?
「おぉ、ボウズじゃねぇか!熟睡かぁー?」
広場に着いて一番にマイトさんに会う。
「もうぐっすりですよー!」
「同い年の王女様はこれから一大イベントだってのになぁ!」
「本当にうちのカインは…」
「まぁまぁダンナ!寝る子は育つって言うじゃねぇか!」
マイトさんは大きな手でカインの頭をガシガシと撫でると屋台の方へと歩いていった。
「あらぁ、カインくん?」
「大きくなったわねぇー」
それからも、クリーニング屋のファースさん、パン屋のブレッダさん、本屋のジャッシーさんとジャッキーさん。
他にもたくさんの人に会って、カインは出会った人全員にかわいがられていた。
「ん?何か空暗くなったな」
「え、本当?」
干しっぱなしの洗濯物の心配をしながら空を見上げると、北の空から真っ黒な雲がやってくるのが見えた。
「ねぇ…!」
「あの雲何なんだ!?」
「ママ怖いよぉー!」
「こんな日に!」
だんだん空を見上げる人が増え、悲鳴が大きくなるにつれて、真っ黒な雲はどんどん王国に近づいてくる。
「オギャァァァ!!オギャァァァ!!」
怖くなったのか、さっきまでご機嫌だったカインも大泣きし始めた。
「皆さん落ち着いてください」
「「国王様…!!!!」」
王国中がパニックに陥りかけたその時、国王様が外の騒ぎを聞いてバルコニーに出てきてくださった。
国王様の登場で皆がほっとしたのも束の間、再び恐怖が王国を包んだ。