恋飴
「桜が満開となったこの良き春の日に……」


入学式の校長先生の挨拶が始まる。


たくさん勉強して、ようやく入ったこの高校。

期待に溢れた思いで、入学式に出席するはずだった。

しかし、
私の頭からあの言葉が離れない。



「まぬけ顔。」



なんなんだ…あの人。


いくら私がまぬけ顔してたって、初対面の相手にそんなこと言うのはどうなのだろうか。


それに一応私は女子なんだよ?


イケメンなのに非常識だなんて…もったいないなぁ。


そんなことばかり頭に浮かんでいた最中、校長先生の挨拶が終わった。



「生徒代表挨拶、神木黎斗。」


神木黎斗……。


代表挨拶ってことは、トップ入学か…。


私が死に物狂いで掴み取ったものを、こうも飄々と取れちゃう人がいるんだよな。



私はその神木黎斗がいるステージを見た。


「!!!!!!!!?????」



「第75回生徒代表挨拶、神木黎斗……」



神木黎斗って………


ウェーブのかかった黒髪。

秀韻北高校の人気な制服を着こなしたスタイル。


鋭くどこか冷ややかな目。

頬を赤く染める女子生徒。









まさに…


それはあの人だった。
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