恋飴
***


「…さっさと起きろよ。」

「…ん?」


目を開くと、そこはどこかの部屋だった。

重たい身体を起き上がらせる。

保健室かな?


「……。」


誰かの声が聞こえた気がするんだけどなぁ。


でも、周りには誰もいない。


「…気のせいか。」


私はベッドから出た。

倒れた後、誰か運んでくれたのかもしれない。


「お礼言わないとね。」


何気なく言った言葉だった。



「ふーん…何してくれんの?」


「!!!!」


身体を強張らさせ、身構える。


…誰かいる。


しかも…男子だ!!


「んっ!!!」


その瞬間、いきなり口を押さえられた。

なっ…なに!?


必死に抵抗する。

しかし、その手はすぐに押さえつけられてしまう。


恐い…恐い!!

身体の震えが止まらない。

目元がじわじわと熱くなる。



すると耳元でため息がした。


「…なに泣いてんの?」


なに泣いてるって…

こんなことされてるのに、泣かない人なんていないでしょ…。


ついに、私の目からは涙が流れた。



「あー…わかったわかった。」



声の後、すぐに身体は解放された。

全身の力が抜け、その場にへたりこんでしまう。


「手袋してれば問題ないらしいな…。」


…問題ないって。

何言ってんの、この人。

震える手を抑えながら、私を襲った男子の姿を見る。


「!!!!!」


私の視線に気づいたその人は、面倒くさそうに私を見下ろす。



…金色のバッチ。



















「…神木………黎斗?」







まさにあの人だった。








「起きるのがおせーよ、まぬけ顔。」



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