探偵事務所は休業中
理由1
「はっ……はっ……」
宵闇が迫るこの時刻。
一人の少女が泣きながら町を駆けていた。
彼女の名前は閑田羽兎(かんだ わと)。
大学一年生だ。
三雲探偵事務所というところで助手をしていた。
しかし今はもう助手でも何でもない。
走る度に頭の上にちょこんと結んだ髪の毛が揺れる。
彼女の気持ちとは裏腹に、下で結んでいるみつあみは元気そうに跳ねた。
「――紘哉さんのバカ!」
確かに私が悪い。
でもそこまで怒る必要は無かったんじゃない?
羽兎はとにかく走り続けた。