探偵事務所は休業中
羽兎を適当にあしらい、話を進める。
羽兎はようやく霞から目を離し、彼の持っている資料に目を向けた。
「クロちゃん、何でその時間になるといなくなるんでしょうね?」
「さぁ?それが分かったら苦労しないッスよ」
「ですよねー」
部屋の中が静かになる。
壁にある、振り子時計の音が、やけに大きく聞こえる。
やがて霞がおもむろに口を開いた。
「もしかしたら……他になついていた人がいるんじゃないか……」
「え?」
羽兎が聞き返す。
霞は首を横に振り、小さくため息をついた。
「あくまでも可能性です。確たる証拠が無い限り、どんな考えも机上の空論に過ぎない」
「何かめちゃめちゃカッコイイ事言ってますけど、簡単に言えば、証拠を見付けてこいって事ですよね?」
「ちょっと違うけど……まぁ、そんなモンです」