探偵事務所は休業中
「いいッスか。クロは飼い主になついてました。だから、いつもどこかへ行っても、必ず時間には帰ってきた」
「二時間すると帰ってくるって調書には書いてありますよ」
「そう。だから、そんなに遠くには行っていないハズ。つまり……」
霞はどこからかコンパスを取り出した。
依頼人の自宅付近を支点に、小さく円を描く。
「クロはここを縄張りにしています。ここから出ることは、恐らく無いでしょう」
「なるほど……」
さすが探偵界の貴公子と言ったところだろうか。
推理に無駄がない。
羽兎は感心したようにため息をついた。
「じゃあ、早速クロちゃんを探しに行きましょう!」
「……何でッスか?」
「……え?」
思いがけない質問に戸惑う羽兎。
彼女は困ったように頬を掻いた。