探偵事務所は休業中
「その猫、僕が手懐けた。早く返して」
「そう言って、この猫殺すんでしょ?」
「それで保健所に持って行く」
虚ろな目がクロに向く。
クロは微動だにせず、少年を見つめ返していた。
「クロは渡さないんだから!」
「どうして?」
「だって飼い猫だもん!アナタの猫じゃない!」
自然と羽兎の声も大きくなる。
少年は虚ろな目で羽兎を見据える。
「だから何?じゃあ、君がこの猫の身代わりにでもなってくれるの?」
「……え?」
羽兎の動きが止まる。
「いやいや!ちょっ……待って!」
しかし、少年は有無を言わさず突っ込んでくる。