探偵事務所は休業中
クロを抱き締め、少年から顔を背け、膝を抱えて小さくなった。
「うっ……」
鈍い音。
呻く声。
しかし、それは羽兎から発せられたものではなかった。
羽兎はゆっくりと顔を上げた。
「――世話の焼ける人ッスね。紘哉サンに同情しますよ」
そこには右手をブラブラと振り、顔をしかめる霞が立っていた。
足元には少年が倒れていた。
「なっ……何で!?」
羽兎は目を白黒させ、二人を交互に見る。
霞は大げさにため息をつき、緩んだネクタイを締め直した。
「何でって……そりゃあ、クロを探しに来たに決まってるでしょ」
「だって、霞さんは安楽椅子探偵だって……」
「そうッスよ。そこの誰かサンが余計なことしなければ、僕はこんなに体使うようなことしなかったッスよ」
「すみません……」