探偵事務所は休業中

クロを抱え、その場に縮こまる。
ふと、羽兎の目線が少年の方に注がれた。
それを感じ取ったのか、霞が説明を始める。

「コイツは、通称『病み男(やみお)』と言ってですね、ちょっとした殺人鬼なんスよ」

「殺人鬼……」

羽兎の顔が歪む。
霞は病み男を突っついた。
微かに彼が反応を示す。

「15歳くらいなんスけど、既に何回も院にお世話になってます。
最近は落ち着いてたんスが……この様子だと、どうやら保健所事件の犯人っぽいッスね」

「本人もそう言ってました」

「そうッスか」

霞はポケットから白い携帯電話を取り出し、どこかへ掛け始めた。
話の内容から、110番に掛けたのだと理解できる。

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