探偵事務所は休業中

その時、病み男が微かに動き、手の側に落ちているナイフを掴もうとした。
羽兎は慌てて立ち上がり、ナイフを思い切り蹴飛ばした。

前を見る。
電話をしている霞の背中が見える。

彼を見た安心からか、自然と涙が溢れてくる。
羽兎はクロを足元に下ろし、彼の背中に勢いよく抱き着いた。

「おわっ!なんスか?」

驚いたように霞が前につんのめる。
羽兎は構わず、泣き続けた。
足元でクロが心配そうに泣く。

霞は携帯を仕舞い、羽兎を引き離して彼女の顔を見る。

相変わらず、彼女は顔をぐしゃぐしゃにし、目を擦っている。
霞は少し屈んで羽兎の目線に合わし、問い掛けた。

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