探偵事務所は休業中
「急にどうしたんスか?」
「だって……怖かった……死ぬかと思った……」
「相手は15歳ッスよ?」
「それでも!ナイフ持ってるし……怖かった!」
「そうッスか……っておわっ!!」
羽兎は再び霞に抱き着き、さっきよりも激しく泣き出した。
霞は困ったように笑うと、羽兎の背中に片手を回し、もう片方の手で彼女の頭を撫でた。
「もう大丈夫ッスよ」
「うん……うん……」
それでも離れようとしない。
彼は前髪を飛ばすように息を吐いた。
「……しょうがないッスね。警察が来るまでッスよ」
二人と病み男の間をクロが行き来し、躊躇いがちに小さく鳴いた。