探偵事務所は休業中
羽兎は霞から目を逸らして立ち上がる。
キュロットスカートについた土埃を払った。
「ワトコ」
「何ですか?」
霞の呼び掛けに応じる。
彼は真摯な目で羽兎を見つめた。
少したじろぐ羽兎。
彼は静かに口を開いた。
「やっぱり、帰ってください」
「……え?」
意味が分からず、ポカンと霞を見つめ返す。
彼は呆れたように首を振ると、腕を組んで言った。
「ワトコが相棒だと、何かやりにくいです。それはワトコも同じでしょう」
「そ、そんなこと無いですよ!私は――」
「だったら、何で僕の言う通りにしなかったんッスか?」
羽兎の言葉を遮り、鋭い目を向ける。
いつもの気だるそうな霞からは、全く想像がつかない。
「僕のやり方じゃ肌に合わない。そう思ったからここまで探しに来たんでしょう?」
「それは……そうです」