探偵事務所は休業中



後日。

「カスミくーん!」

「なんスか?」

「ポストに依頼状入ってたよ!」

焔美が封筒を左右に振りながら駆けてくる。
霞はヘッドホンを外し、ゲームから顔を上げた。

「誰からッスか?」

「警察から!」

「何でポストに入れるんスかねぇ……物騒な」

「まあまあ、開けてみようよ!」

封筒を渡し、霞の隣に立つ。
霞は焔美を一瞥し、封筒を開いた。

中身は殺人事件の依頼だった。
彼は調書に一通り目を通すと立ち上がった。

「行きますよ、ホム美さん」

「え?どこに?」

「決まってるじゃないッスか。殺人現場ッスよ」

説明されても、焔美は未だに不思議そうに首をかしげている。
そんな彼女に向かって、彼は自信たっぷりに微笑んだ。

「事件現場に行かないと、分からないことはたくさんあります。やっぱり、自分の目で確認することが大切ッスよ」

「そっか。うん!行こう!」

霞の後を焔美が追いかける。
彼は事務所のドアを閉めた。


安楽椅子は、もう必要では無くなった。


【終わり】

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