探偵事務所は休業中
*
後日。
「カスミくーん!」
「なんスか?」
「ポストに依頼状入ってたよ!」
焔美が封筒を左右に振りながら駆けてくる。
霞はヘッドホンを外し、ゲームから顔を上げた。
「誰からッスか?」
「警察から!」
「何でポストに入れるんスかねぇ……物騒な」
「まあまあ、開けてみようよ!」
封筒を渡し、霞の隣に立つ。
霞は焔美を一瞥し、封筒を開いた。
中身は殺人事件の依頼だった。
彼は調書に一通り目を通すと立ち上がった。
「行きますよ、ホム美さん」
「え?どこに?」
「決まってるじゃないッスか。殺人現場ッスよ」
説明されても、焔美は未だに不思議そうに首をかしげている。
そんな彼女に向かって、彼は自信たっぷりに微笑んだ。
「事件現場に行かないと、分からないことはたくさんあります。やっぱり、自分の目で確認することが大切ッスよ」
「そっか。うん!行こう!」
霞の後を焔美が追いかける。
彼は事務所のドアを閉めた。
安楽椅子は、もう必要では無くなった。
【終わり】