探偵事務所は休業中

「レポート大丈夫なのかな?」

そんな疑問が生まれてくるが、本人はさほど気にしていない様子だった。
妹から預かってきたガラガラを手に、真由美をあやす。

「大人しくていい子だねー」

焔美が話し掛ければ、真由美が笑って答える。
歌のお姉さんか幼稚園の先生になりたかった焔美にとって、この光景は理想的だった。

「あー、癒されるぅ……」

チラと霞を見ると、彼は拓実をまだ追い掛けている。
拓実は笑いながら逃げ惑い、やがては焔美の後ろにやってきた。

「たっくん、まだ逃げてるの?」

「だって、おにいちゃん、くる!」

しゃがんで目線を合わせれば、拓美が息を切らしながら必死で説明する。

この頃は遊び盛りだ。
本当は公園にでも連れていきたいが、今日は雨がざんざん降っていた。

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