探偵事務所は休業中
カランカランとドアベルが軽い音で鳴る。
夕日の差し込む薄暗い事務所。
「こんにちはー……」
羽兎は一歩ずつ足を進める。
人の気配がしない。
彼女の足音だけが静寂に響き渡る。
少し進むと、目の前に茶色いドアが現れた。
羽兎はそのドアを開いた。
「こんにちはー……」
窓辺の近くのデスクに、男らしき人がいるのが見えた。
後ろを向いていて、羽兎の事に気付いてないらしい。
耳に黒いヘッドホンをしている。
そして、窓辺からオレンジ色の光が差し込んでいる。
羽兎がもう一度声を掛けようとしたその時。