探偵事務所は休業中

一通り掃除機をかけ終わった霞は手を止め、小さく溜め息をついた。

「何をそんなに焦ってるんスか?」

「……え?な、何の事?」

掃除機を片付ける霞を見ながら、焔美は立ち上がった。
そんな彼女の顔を見ず、手を動かす霞。

「別に、無理してやる必要は無いんスよ?いや、まぁ、確かに生活最低限の事は出来なくちゃいけませんが……」

「?」

「早く相手に追い付こうとか、そういうのは考えなくていいんです。自分のペースでゆっくりと覚えた方が、身のためになります」

「カスミくん、お姉さん何の事だか……」

少し戸惑いながら、苦笑いを浮かべる。

本当は分かっている。
しかし、それを認めてしまえばその甘えに縋ってしまいそうで怖かった。

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