探偵事務所は休業中
「――気付いてますよ。何かあったんですか?」
紘哉とは違う、低くて軽い声。
羽兎は一瞬固まった。
そんな彼女に構わず、その男は続けた。
「目が赤いですね。さっきまで泣いていたんでしょう」
「何で分かるの……?」
「何故って聞かれても困ります。
貴女も見たでしょ?ここの看板。《紅花探偵事務所》。
僕は探偵ですから何でもお見通しです」
「そうですか……」
依然として男は振り向かない。
何でもお見通しな男。
羽兎は少し顔を見てみたくなった。