探偵事務所は休業中
No.1
夜中だろうか。
書類をまとめていた恵一の元に、一本の電話が掛かってきた。
辺りを見ても、誰も出る人がいない。
しょうがないと思いつつ、彼は電話を取った。
「はい、こちら――」
「先程、通報があった」
「はい?」
思わず聞き返す。
上司であろう人は、淡々と電話口に向かって話し掛ける。
「場所はここから近くにある、駅前の歓楽街の路地裏だ。
どうやら、人が倒れているらしい。至急駆け付けるよう」
「りょ、了解しました!」
最近、やたらと通報が多い。
まさか、事件でも……
背筋が凍り付く。
近くに放置してあったコートを羽織り、備え付けの電話を取る。
そして、親友の電話番号を打ち込んだ。