探偵事務所は休業中

小さく何かを呟くと、朋恵はぐいと恵一の方に顔を近付けた。
突然の事で驚き、思わず後ずさる恵一。

そんな彼に向かって、朋恵は一言、

「アンタ、風邪引いてるんじゃないの?」

と真剣な顔で言ってきた。

「いやいや!そんなこと無いですよ!ピンピンしてます!」

「そう?でも顔は赤いわよ?」

「それは先輩が近いから……」

しどろもどろしながら目を逸らす。
美人に顔を寄せられ、頬を染めない男がどこにいるだろうか。

あ、鉄仮面のアイツがいるわ。
いやいや、そんなこと言ってる場合じゃ……

「ぼーっとしてるし、これは重症ね。今回の通報は私達が行くわ」

「え、いや!俺が行きます!」

首を振り、元気なことをアピールする。
しかし、朋恵は眉を寄せるだけだった。

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