探偵事務所は休業中
「私がわざわざ気を使って言ってあげてるのに気付かないとは……」
「え?何の事ですか?」
ポカンとする恵一に向かって、大袈裟に溜め息をつく朋恵。
彼女は髪をかきあげ、彼を睨んだ。
「最近無理しすぎよ。もう少し、家族と一緒にいてあげなさいよ。子供、小さいんでしょ?」
「……!」
恵一の目が見開かれる。
彼は呆然としたまま、返事をすることができなかった。
「今回、アンタの出る幕はないわ。こっちの事件は私達に任せて、アンタは書類整理して定時に帰ればいいの」
「でもでも……!」
「用はないわ。それじゃあ」
朋恵は彼を押し退け、ヒラヒラと手を振って出ていった。