探偵事務所は休業中
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書類をまとめ、署を出る。
こんな夜中なら、あの子はとうに寝ているだろう。
と言うより、寝ていなければ困る。
そんなことを考えながら、足を進める。
しばらく歩いたところにある、小さなアパート。
恵一は自分の号室ではなく、隣の家のインターホンを押した。
「夜遅くにすみません。隣の花形です」
『あ、はーい』
明るく返事をする女性。
インターホンを切る音が聞こえてきたと思うと、すぐに玄関のドアが開いた。
50代くらいの、茶色いセミロングの女性がニッコリと微笑む。
そして、腕に抱いた眠っている少女を恵一に渡した。