探偵事務所は休業中
「あの、私……」
「焦らないで下さい。大体涙のワケは想像できます。
まずは自己紹介といきましょうか……ね」
そう言って男は、クルっと椅子ごと回しながら振り向いた。
明るい茶色の肩まで無造作に伸びた髪の毛。
整った顔。
紘哉と同じ切れ長の目。
そして……なぜか口にくわえたイチゴポッキー。
「ようこそ、《紅花探偵事務所》へ。
僕がここの所長、紅花霞(べにばな かすみ)です。
……以後、お見知り置きを」
薄い唇を緩め、優しく微笑む霞。
羽兎は一瞬どきりとした顔をした。