探偵事務所は休業中

彼もポケットから鍵を取り出し、自分の号室の鍵穴に差し込んだ。
ドアを開けると、ひんやりとした空気が二人を包む。
エアコンの予約をしていなかったせいで、部屋が凍るように寒い。
失敗したな、と苦笑いしつつ、部屋の電気をつける。
パラパラと音が鳴ったと思うと、白熱灯が寂しい部屋を照らした。

取り敢えず、この子を寝かせておく方が先だ。
居間の隣の襖を開け、彼は少女を引きっぱなしの布団に寝かせた。
首元まで布団を伸ばし、寒くないようにする。

布団に寝かせた少女の頭を撫でると、彼は襖を閉じた。

「つっかれたなあー」

残業の上、紘哉は電話に出ないし、新しい仕事は取られるし……

散々だと思いつつ、笑うことしかできない。

今日はシャワーを浴びて寝よう。
恵一は背中を伸ばし、着ていた薄いコートを脱いだ。

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