探偵事務所は休業中



「はーちゃんを預かってくれませんか?」

暗い部屋。
眉を下げて取り調べをしていると、彼女は突然そう言った。

何ヶ月前の話だろうか。
友人の助けを借りて、一つの殺人事件を解決した。
実行犯一人に、共犯者が一人。
その共犯者の彼女から、そんな言葉が飛び出した。

「どういうことですか?」

眉を寄せ、思わず聞き返す。
とんでもない重罪ではない限り、執行猶予はつく。
その間は、家族と過ごすことだってできる。
それなのに……

「後ろ指、指されたくないんです」

ポカンと口を開けて固まる恵一に、彼女は優しく微笑みかけた。

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