ラプソディ・イン・×××
「広くて、キレイで、静かで、

…うん、いいトコだった」



人のいない駅の

ベンチに座って電車を待つ。



オレの横でスミレは

広がる景色に目をやった。


「景色もいいもんね、

海が目の前で。

見晴らし最高」



「…そうだな」


駅からも海が見える。


夕日が反射してキラキラ眩しい。


ようやくやってきた電車に乗り込み

座席に並んで座った。



「…ちゃんと話できた?」



「…うん」


ゆっくりと電車が動き出す。


見渡しても

ほとんど人がいない。



海の近い、静かな病院。


親父の入院先。



時間の流れが、

どこよりゆったりしている。




「親父の奴、穏やかな顔してた」



毒が抜けた。

そんな感じだった。




親父は、別人のようだった。


病室に入った最初、

言葉を失った。



何か音楽でも聞いていたのか、

耳につけたイヤホンを外す

親父の手は骨が浮き、

頬は、げっそりと痩せて、

覇気がなかった。



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