ラプソディ・イン・×××
親父はよく笑った。



いつもの、

人を見下したような、

嫌みったらしい笑いじゃなくて、

初めて見る、達観したような笑い。



それはとても悲しそうにも、

あきらめたようにも見えたし、

楽しそうにも、

感謝しているようにも見えた。



思ってたより、

ミジメったらしい

終焉を迎える感じじゃなくて

安心した。




だけど、

絶望している訳ではなく、

自分の運命を受け入れている。


深海のように静かな覚悟を

たたえた目を見て、

話ができるようになった。







「…来てよかったよ」



「そっか」


小さな細い指が

オレの手の平を包み込んでいる。



行くときは、

しがみつくように握り返してた。


迷子の子どもみたいに。




一人で見舞えない、

そう言ったら、

スミレは

一緒に行ってあげると言った。



ちょうど期末試験も終えた

土曜の昼間、

スミレの付き添いで

オレは初めて親父の病院を訪れた。



病院の待合室にスミレを残して、

オレは一人で親父の病室に行った。




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