ラプソディ・イン・×××
「何これ、嫌な色してんだけど」



目の前に置かれたタンブラーを

いぶかしげに眺める。


赤々とした液体が入っている。




「バージン・メアリー。

どうぞ」



涼しげな顔で、

ジンはオレにカクテルをすすめた。



赤色のドリンクの中に

スティック・セロリが

差し込まれている。



「トマトジュースに

レモン、ウスターソース、

タバスコを加えたカクテルや」



「つーか、トマトもセロリも

苦手なんだけど…」



「ウォッカ、

お前ちょっと痩せすぎ。

健康考えて作ったったんやで。


見てみ、このトマトジュース。

甘くて青臭さがないから

トマト嫌いな人間でも

イケるっていう。


ネットで見つけてん。これ」



ジンは、誇らしげな顔で

オレの前に

どこぞの高原でとれたっていう

稀少なトマトジュースの瓶を

ドンっと置いて見せた。




「…太れねぇのは

体質なんだよ、ったく」


しぶしぶ

グラスのエッジに飾られた

カットレモンを、

ドリンクに搾り入れた。


セロリでグラスの中をかき混ぜ、

気合い入れて一気に飲み干す。



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