ラプソディ・イン・×××
「おじさん本人は

なんて言うてんの?」



「それが、

伝えなくていいって」



オレが

佐野椎南の存在を知ってることと、

実は同じ高校に行ってるってことを

さらっと伝えたけど、

親父は別に驚かなかった。



オレが何を知ってるのか、

何をどこまで知ってんだか

知らねぇけど。



隠し子がいるってことくらい、

まぁ、下世話な叔母さんたちの

性格知ってりゃ、


オレが

何も知らずにいるはずないって

わかりそうなもんだしな。




ここに連れてきてやろうか?

って冗談ぽく聞いてみたら、

親父は“いいよ”って

断ってきた。



「それ以上は聞かなかった。

けど、もっと…、

例えば何度でもしつこく

“ホントは会いたいんだろ?”

“連れてきてやるって”って

言ってやるべきなのかな、って」




佐野椎南に対して、

親父は遠慮してるだけで、

ホントは会いたい気持ちが

あったとしたら…。


いや、でも本心から

会わなくていいって

思ってるのかもしれないし。



そこをもっと、

突っ込んで聞いてやるべきなのか、

もうそっとしといてやるべきなのか。



親父を見舞うたび

オレの悩みは強くなる。




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