ラプソディ・イン・×××

ステージに、

黒人の男が、

使いこなされた黄金に輝く

テナーサックスを片手に

登場した。



ピアノの伴奏。


テナーサックスの旋律。



ゾクッとした。


シックな照明。

漂うダンディズム。



オレにはまだまだ出せない

大人なムード。



息の漏れたような、

かすれたサウンド。


ちょっと思わせぶりぐらいに

響かせるサブトーン。




サブトーンとは、

息を混ぜた音だ。


テナーサックスの

本来のハスキーな音色の中に、

かすれた声を絞りだしたような音。



こればっかりは…、

アルトじゃここまでは出せない。



渋くて、切なくて、

ゴージャスだ。



ゾクゾクと鳥肌が立った。



「まじカッコイイ！！」


感嘆が漏れるように

口から出た。



「ホント、かっこいいわね」


横に立って聴いてるフリアも

同意した。



「ちょっ…！ウォッカ？！

どこ行くの？！」