ラプソディ・イン・×××
『サックスと言えば

アルトかもしれないが、

ことジャズに関して言えば、

サックスといえばテナーだ』



昨日会いに行ったとき、

親父が言っていた。




病院の中に、

小さなホールがあって、

たまにボランティアで

音楽やってる奴が

演奏に来たりするんだそうだ。



グランドピアノが

置いてあるだけの、

円形の、ホントに小さなホール。



『今日は体調がいいんだ』


そう言った親父の車いすを押して、

そのホールに行った。


せっかくだからその場で

オレのアルトを聴かせてやった。



けど、やっぱり親父にとって、

サックスといえば

ジャズ&テナー。



なんとなくだけど、

オレのアルトを

なかなか認めないのは、

そのせいなのかとも思った。




『ジャズやってくなら

テナーは絶対外せない。


テナーが主役になる曲は多いし。

アルトには出せない

低い音が出せるのは

本当に魅力的だ』



耳にタコが出来るくらい

親父の口から聞いた言葉。



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