ラプソディ・イン・×××

親父は音楽をあきらめた。



そのくせ、だ。


もうサックス吹かないくせに、

後生大事に置いてあることを

オレは知っている。


モノ自体

実際見たことないんだけど。



吹かないくせに

手入れはしてるって、

親父んちの家政婦から

聞いたことがあったから。




ずっとオレは、

アルト一筋だった。


だって心底カッコイイって

思ったから。



だけど一回

テナーも吹いてみたい。


好奇心がムクムクと

湧いている。


だって心底カッコイイって

思ったから。



今までだって

山ほどテナー奏者見てきたけど。


だから何で

今さら目覚めてんだって

話なんだけど。


イイと思ったら、

やらなきゃ気が済まない

性格なんだ。



アルトよりも大きくて、

腰に添わせるように

斜めに構える。


今さら、

そんな立ち姿すら

カッコイイって思う。