ラプソディ・イン・×××
「サックスは、

いつもなら、

ここに置いてあったはず

なんですが…」


家政婦がそう言った場所には

何も置かれていなかった。



処分したのか、

どこかへやってしまったのか。



テナーサックス、

ちょっとだけ借りようと

思ったんだけど

ないものは仕方ない。




仕方なしに親父の家を出た。




もう戻れない。


すべてを片付けて出ていった。


物だけでなく、

心も、だろうか。



親父の覚悟を

目の当たりにした感じで、

親父の家の戸を

閉める手が震えた。




片付ける物のないこの家に、

オレももう二度と

来ることはないんだろうな。




少し怖かった。





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