ラプソディ・イン・×××
親父が死ぬ間際だってこと。

それを

佐野椎南に伝えるかどうか。


すべては

この元義父に託そうと思った。



判断を丸投げして、

ズルイと思いつつも、

オレは元義父に頭を下げた。



元義父が、親父のことを

佐野椎南に伝えたとして、


それから

親父に会うかどうかは、

佐野椎南の意思に

任せようと思ったんだ。



だってオレには、

佐野椎南の気持ちなんて、

これっぽっちも

分からないから。



育ての父親である

この元義父の方が、

佐野椎南のこと

よく分かってるだろ。


だから…。



オレに思いつく最善は、

これくらいだ。




しばらく元義父は、

目を伏せて考え込んでいた。


オレもコーヒーに浮かぶ氷が

溶けていくさまを眺めながら、

元義父の答えを

じっと待っていた。



重苦しい空気の中、

元義父は決心したように

一度咳ばらいして口を開いた。


「…わかったよ」


短い言葉だったけど、

声には重みがあった。



< 122 / 242 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop