ラプソディ・イン・×××
オレの気をよそに、

ハラっと落ちた長い前髪を

耳にかけながら

スミレは確信的な笑みで言った。


「だからね、

セクシーさを表現するのが

上手いウォッカだから、

テナーのサブトーンも、

ウォッカなら

ハマると思ってたんだよね〜♪」



返事に困った。


図星だったから。



テナーの響きすぎない低い音。

そのサブトーンの

かすれるような音色は、

渋くて、艶があって。


最っ高にセクシーだ。と思う。



見透かされたみたいで、

恥ずくて、


「…いーから、練習すんぞ!」


わざとらしく話をそらして

練習に戻った。



スミレのテナーと合わせて

吹いた。


簡単な曲だけど。

スミレの音に

ついてく感じだけど。




吹きながら、

アルトからテナーに

転向したスミレが、

テナーをイイと思った理由に


『好きになる、理由なんて

しょせん後づけ』


って言ってたのを思い出した。



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