ラプソディ・イン・×××
サックスをやめた親父も、

もしかしたら、

ここに来て

こっそり一人

吹いたりしたのかも

しれないなぁ…。




暖炉の上には

10枚もの写真が

立て掛けられていた。



産まれたてのオレ。

小学校入学式のオレ。

サックスを

初めて構えたときのオレ。

卒業式のオレ。

中学校入学式のオレ。

初めてサックスコンクールに

出たときのオレ。

中学校卒業、

高校入学のときのオレ。

コンクールで

賞を取ったときのオレ。



入学、卒業式に

親父が来たことなんてない。


来たのは母さんだけだ。


てことは、

母さんから

家政婦に渡したものなんだろう。



家政婦は、

親父ん家の家事だけじゃなく、

親父と母さんの橋渡し的な

存在でもあったから。



だから昔は

親父に会うよりも

家政婦に会うことのが

多かったし、


母さんも

家政婦のことは

嫌ってはいなかった。




「…あ」


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