ラプソディ・イン・×××

正面玄関の方から

オレの名を呼ぶ声に気がついた。



「ウォッカ！」



振り向いたら、

スミレが

小走りでかけてくる姿が

目に飛び込んできた。




オレは驚いて

頓狂な声をあげた。


「えっ！

わざわざ遠いのに

マジで来たんだ！！？」




この家に来る前に、

スミレにメールを送っておいた。



オレ今から

親父がオレに遺したものを

確かめに行く、って。


良かったら

スミレも来いよ、って

冗談半分で

住所もメールに入れて送った。



真に受けてか、

スミレはやってきた。



「何それェ！もォー！

ウォッカが来いって

言ったんでしょお？！」


スミレは口を尖らせた。



「ゴメン、ゴメン。

急だったし、遠いしさ、

マジで来てくれるとは

思わなかったんだ」



謝ったら、

スミレは一変して、

優しい声色になった。


「…来るよ。

だって約束したでしょ。

…慰めてあげるって」


そう言って微笑んだ。


痛みをこらえているような、

無理やりつくったような

笑顔だったけど。