ラプソディ・イン・×××
輝くばかりの華やかなアルト。

豪快で渋いテナー。



音色的には、

アルトは女性の声に、

テナーは男性の声に例えられる。


吹いてる人間は、逆だけど。




「はい、喉渇いたでしょ」


何曲か合わせたあと、

室内にある冷蔵庫から

お茶のペットボトルを取り出し

オレにすすめた。


「サンキュー、先生」

ありがたくいただいて、

ちょっとばかり休憩する。



「“先生”じゃなくて

“スミレ”でいいよ、

みんなそう呼ぶし。


だいたい私、派遣の図書室勤務で、

教師じゃないからさ」


スミレは近くのパイプイスに腰掛けて

ペットボトルのフタをひねった。


オレは親指と人差し指で

○をつくってうなずく。


「じゃー、オレもウォッカでいい。

みんなそう呼ぶから」


「了解。“ウォッカ”ね。

洒落たあだ名ね」


喉が渇いていた。

一気に半分くらいお茶を飲んで

一息つく。



「スミレは、いつから

テナーやってんの?」


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