ラプソディ・イン・×××
「ブラバンは、

あくまで部活って感じで

引退と同時に吹かなくなった。

第一、楽器が高校のものだったからね。


大学入って、

ジャズの生演奏を初めて観て、

テナーのかっこよさに

目覚めたってわけ」


「目覚めた…?」


「うん。雰囲気に飲まれた。

とにかく大人のテナーが

かっこよかったの。

速攻でバイトしてテナー買ったわ」


「持ち替えるのに苦労はなかったの?」


「指づかいはアルトと同じだからね

持ち替えはそんなに苦労なかった。

大きさの違いで息とか重さとか

戸惑うことあったけどね」



サックスっていえば、

アルトじゃん?


サックスの中で

最も標準的な楽器で

最も主役になれて

一番演奏者も多い。



テナーも、

アルトの次に

よく使われてはいるけど。


まあ、要は好みの問題で、

楽器の良し悪しを比べるのは

愚問ってもんなんだけど。



「とにかくテナーが

かっこよかったの」


スミレは、

遠くにある眩しいものを

見るような目で言った。


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